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学生でもできる研究環境づくり


目次


議論はただ

研究室のアクティビティーを高めることは、研究室の中心となっている分野のためだったり、研究室そのもののためだったりといくつか意義はあると思いますが、学生にとっては、「自分のため」というのが一番大きな意義ではないでしょか。ともすると研究は個々人でやるものであり、自分自身とのたたかいという雰囲気が作られやすい気がしますが(もちろんそういう側面もあるけれど)、やっぱり日常的に、議論したり、アドバイスし合ったりできる方が、テーマに対する理解の深まりがぜんぜん違います。学会や発表会などで、発表を終えてやや放心しているときに、思いもよらない質問がきたりすると答えに窮することがあります。質問されて、とっさに答えることができるのは普段から考えていたり議論していたりしていたことであることです。

物理的な研究環境は、研究初心者で半人前の学生にはなんともしがたいところがあるけれども、議論する機会を増やすといったソフトな環境は、努力すれば、自分が研究を進めるのに快適な環境を作ることができると思います。

 

学生どうしでコミュニケーション

研究室で楽しく議論するためには学生同士というのがとっても大事だと思います。理由は、@教官やスタッフは忙しい。A「なぜその分野で研究するのか」とか「なぜ研究するのか」とかいったそもそも論のところから共感できる。B議論が天下り的にならないので理解までのプロセスも一緒に頭に入る。といったこところがあげられます。

ただ、じゃあ、「コミュニケーションをしっかりとろう」と自分だけ思っていても(たとえみんなが思っても)そう簡単に議論が弾むという環境にはなりません。自分が話したいとき、相手は忙しかったり、気がのらなかったりすることもあります。だから、特に最初のうちは、申し合わせて「議論するための時間」をつくった方がいいと思います。ただ「議論するため」の時間といっても議論する中身がないのに議論しても意味ないので、輪読会がおすすめ。輪読会は、対象の資料から得られる知識もさることながら、その過程の議論で得られる知識(データの見方とか、相手の興味のあるところとか)がとってもためになります。

去年から、研究室の修士・博士課程の学生でEvolutionary Biologyの輪読会を始めました(他の研究室ではそんなことはないのかもしれないが、これまで研究室には学生がやる輪読会が定着していなかった)。この教科書だけで終わらせずに発展させていったらなかなか楽しくなりそうだという感触を持っています。

生態学はいろいろな対象を相手にするので、細かいところでは、みんなばらばらのテーマで研究ということにもなります。私の研究室は植物個体群を中心としたテーマで研究されている方が多いので、私のように、対象が昆虫(トンボ)で、しかも群集なんていうテーマになると、専門的には馴染みが薄いので研究室全体のゼミでは、あまり突っ込んだ議論はできません。ですから、自分のテーマに近い人々と集まって議論する場も必要になります。昨年から研究室では、「虫ゼミ」なるものを結成して、月に一度くらいは、最近研究室の中に増えてきた昆虫研究者どうしで集まって意見交流や研究報告などをしています。


個別に相談する

いま何を面白いとおもっているかといったことも含めて、全面的に自分自身の研究を把握しているのは自分だけです。したがって、いきなり聞きたいことのトピックだけを持っていっても、なかなか話が通じません。ですから、何かの時に相談することのある人には、日ごろから自分の研究の全体像を把握しておいてもらえるように、「系統的に」相談するのを心がけるのが良いと思います。また、相手にもいろいろ得意分野があるので、たとえば研究の流れ全体は先生に、統計関係はこの人に、フィールドワーク関係はこの人にといった、自分の分野別相談パターンをつくっておくと便利です。

考えがまとまらないときや、ふと良い考えがうかんだり、図表が上手くできたりたしたときなどに気軽に話しかけられる相手がいると良いです。それが身近な人(隣の机で仕事している人とか)だとなお良いです。必ずしも相手がその事柄に理解が深くなくても、相手にあーだこーだ言って説明しているうちに上手く考えがまとまったり、自分とは全く違う視点のコメントをもらって自分では気づかない欠点に気づいたりすることがよくあります。


人の相談にのる

人の研究の相談にのることもとっても勉強になります。これは相手の発表を聞いて質問する時の効果(竹中さんのページ)と似たようなものかもしれません。相手の発する断片的な言語(たまに図)情報から相手の頭の中にある問題の全体像を、推測してそこで問題になっていることに対しての自分なりの答えなり考えなりを出すという作業は、研究のどういう場面でも必要とされる作業だと思います。特に、研究室に入ってきたばっかりの後輩の相談にのるということは、後輩の研究への理解を深めることを通じて、近い将来の自分の相談相手を育てているという意味もあると思います。

ちょっと余談になりますが、研究室に入ってきたばかりの時は、右も左もわからないので、研究室の「暗黙の了解」(村岡さんのページ)ですませないで、丁寧・親切に説明しなきゃと思っています。私もそうでしたが、研究に必要な情報は、論文を読んで得るということすらも常識ではありません。学部3年生のとき、英語論文を翻訳するという授業がありましたが、「英文雑誌」という概念がなかった私は、教材が英語の本かと思って一生懸命書店で探した記憶があります。図書館に行けばコピーできるということも知りませんでしたし、それがオンラインで手に入るなんてことは言わずもがなです。「わからなかったら聞けばいい」といいますが、存在すら知らないものは質問のしようがないものです。というわけで、来年度から入ってくる新しい人たちのために、研究室の「しきたり」集をまとめておこうかなとも考えています。


研究室の外でコミュニケーション

これは、私自身これからの目標とするところです。研究室内にこだわらず、外の人々と積極的にコミュニケーションをとりたいものです。学会発表や、論文を書くことも含まれるでしょう。他の研究室のメンバーも参加するゼミや輪読会もいくつか参加していますが、それぞれ雰囲気も違うし、こだわりも違うので勉強になります。今年は特に、昆虫を対象にしている研究者の方々と議論できる機会を増やしたいなと考えているところです。


2004-02-01更新