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角谷が日ごろ興味を持って取り組んでいる研究について紹介します.人工的につくられた水域(トンボ池・学校ビオトープ)にやってくるトンボのたちのことを調べています。


テーマ

近年、都市化や農業形態の変化などにより,湿地生態系における生物多様性の喪失は著しいものとなっています。水田やため池といった湿地環境に生息してきた、トンボもその例外ではありません。現在、個体群を急速に縮小させているトンボ種もあり、失われた湿地の生息環境再生のために"トンボ池"をつくる取り組みが日本各地で始まっています。 トンボ池のような新たに造成された水域には,周囲からトンボ成虫が移入してトンボ群集が成立します。それを手がかりにすれば、地域の種供給ポテンシャル(池の周りの環境がどのくらいその池に種を供給する力をもっているか)を把握することが可能であると考えられます。そこで,種の供給ポテンシャル(イメージ図)を定量的に把握するための研究を行っています.

噛み砕いて言えば,池でトンボを観察していて,「お,こんな種も飛んでくるのか.ここら辺はいいところだな.」という感覚を,誰にでもわかるような理屈(たとえば,林とため池と水田の分布の仕方と,池にくる種の組み合わせなどの関係を明らかにするといった)で,説明できるようにしたいという動機です.

調査地

茨城県霞ヶ浦では、霞ヶ浦の水辺の自然再生をめざす市民主導の協働プロジェクト(アサザプロジェクト)の一環として,1999年から2002年の間に100以上の"トンボ池"が,小学校の敷地を中心に造成されています。私の調査は,このトンボ池を対象に行われています.

ビオトープのトンボたち

造成された池には,まずシオカラトンボやアオモンイトトンボなどが飛んできます.池の植生が発達するにつれて,アジアイトトンボやショウジョウトンボ,クロスジギンヤンマなどが飛んできて,縄張りを張ったり,産卵したりしたりするようになります.植生がさらに発達して水面がほとんど見えないくらいになってしまうと,アジアイトトンボやマイコアカネを残して,他の種はあまり見られなくなってしまいます.

私が調査を行っている地域では,上記のような種が基本になって,あとは周りの環境だとか,池の大きさなんかで+アルファの種が決まっているようです.種によって,産卵時期や,羽化時期などが違うため,成虫がもっとも多く観察される時期は種ごとに異なっていますが,だいたい5月から11月くらいまで,一つの池で3種から5種くらいの種は観察することができます.

今年は、カトリヤンマなんかも観察することができました。

わかったこと

目下,一生懸命,論文をまとめているところです.

保全とのかかわりで

これまでの調査で,池の周囲の環境(土地利用など)が,いくつかのトンボ種の出現パターンに影響を与えていそうだということがわかってきました.このような「周囲の環境の影響を反映しやすい種」は,周囲が持っている種の供給ポテンシャルを把握するのに適した対象になるかもしれません.次の課題は,なぜこれらの種の出現パターンが池の周囲の環境に影響をうけるのかということを調べることだと考えています.

それには,種ごとに,ハビタット利用のあり方を生活史全般にわたって調べることが必要になります.幼虫はどんなところにすんでいて,成虫はどんなところで羽化して,どんなふうに分散して,摂食はどんなところで行うのかなどなど...

トンボ成虫の分散パターンは,羽などにマーキングをして追跡する方法が以前から行われてきていますが,飛翔能力が非常に高くなかなか困難な調査です.トンボにも搭載できるような,超小型発信機があればいろいろなことがわかると思うのですが.

いずれにせよ,このような調査で得られた知見は,「トンボ」の個体群動態の特徴を把握することにもつながるため,個体群が縮小し絶滅が心配されているトンボ種の保全を考える上でも重要なものになるはず(!)と思われます.


2004-01-24更新